小児歯科

お口の機能の発達

口は、「食べる」「話す」「その他(呼吸、表情)」など、生きていくうえで欠かせない機能を担っています。また、全身の健康や成長とも密接に関わっています。子どもたちの健やかな成長のためには、身体とお口の機能を一緒にバランスよく発達していくことが大切です。今回の「子育て知っ得」では「お口の機能の発達」について、ご紹介します。
「ふるいち歯科クリニック」に取材協力をしていただきました。

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お口の主な機能

食べる
食べ物を認識して、口に運び(摂食(せっしょく))、噛んで(咀嚼(そしゃく))、舌で丸めて飲み込む(嚥下(えんげ))。

話す
・舌、頬、唇をバランスよく動かすことで話すことができる。
・一般的には、5~6歳頃に完成すると言われている。

その他
・呼吸:身体にとって最も適切な呼吸方法は、鼻呼吸とされている。
・表情:お口の周りの筋肉などをスムーズに動かすことで表情がつくられる。

お口の機能(口腔機能)の中でも特に「食べる機能」は自然と身につくものではなく、離乳食を適切に進めることで身につけていくことが大切です。

口腔機能発達に視点からみた離乳食

離乳食を月齢に沿って進めれば自然と「食べる機能」が身につくわけではありません。
歯の生え方、舌の動かし方など、その子の発達に応じて進めることで、だんだんと「食べる機能」が身についていきます。
特に、乳幼児期は、食べる・飲み込むなどの口腔機能の基礎を身に付ける重要な時期です。口腔機能の発達に合わせて食事が正しく行われていないと、お口の機能がうまく発達しない状態=口腔機能発達不全につながることがあります。

下記は各月齢に沿った離乳食の目標です。
※成長には個人差があります。あくまでも「目安」として参考程度にされてください。

■離乳食初期(5〜6か月):お口を閉じてごっくんしましょう。
■離乳食中期(7〜8か月):食材を舌と上あごでつぶしましょう。
■離乳食後期(9〜11か月):歯ぐきでかみつぶし、カミカミしましょう。
■離乳食完了期(1〜1歳3か月:少しずつ奥歯をつかってパクパク食べましょう。

口腔機能不全発達不全症とは?

明らかな摂食機能障害の原因疾患がない場合において、食べる・話す・その他の口腔機能が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができていない状態を指す疾患で、2018年に保険診療の適用が認められました。
咀嚼(食べ物をかみくだくこと)や嚥下(食べ物・飲み物を飲み込むこと)がうまくできない、構音(発音)の異常、口呼吸などの症状がみられます。これらは、子ども自身の自覚症状があまりないので、保護者の注意が必要です。
幼児期に本来獲得すべき能力を身につけておかないと、小学校以降に取り戻すのは困難です。年をとって口腔機能が著しく低下し、誤飲性肺炎(高齢者が亡くなる大きな原因の一つ)や早期のオーラルフレイルを引き起こすリスクが高くなります。
発見が早いほど、軌道修正しやすいため、まずはお子さんのお口の状態チェックし、下記のような症状や他にも気になる症状があれば、早めに歯科医に相談しましょう。

こんな症状ありませんか?

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・いつもお口がぽかんと開いている
・食べるのが遅い
・赤ちゃん言葉がやめられない
・あまり噛まずに丸呑みしている
・食べる時にクチャクチャ音がする など

口腔機能発達不全の予防・治療

乳幼児の身体は柔らかく、成長が好ましい方向にもそうでない方向にも進みます。
まずは口腔の正常な機能発育を目指しましょう。
適切な時期に咬合育成をはじめることで、お口周りの筋肉や骨の正常な発育を促します。歯科医に相談しながら、改善していきましょう。

まずは下記を意識してみましょう
1、口を閉じて、口呼吸から鼻呼吸へ
2、舌は上あごにつけて飲み込む
3、のびやかにまっすぐに、立ち、座る
4、まっすぐ前を見る、下(スマホなど)ばかり見ない
5、きびきび動く
6、夜更かししない

お子さんのお口がぽかんとあいてませんか?

頻繁にお口がぽかんとあいているお子さんは口腔機能発達不全症の疑いがあります。
コロナ禍によるマスク生活が続き、保護者や周りの大人たちが、子どもの表情を捉えにくく、口呼吸をしているのに気づかない場合や、口呼吸が異常だと認識していないことが多くあります。

なぜ口呼吸はいけないの?

鼻の中には、細かいブラシのような繊毛と呼ばれるものがあり、ウィルスや細菌をここでキャッチし、鼻水によって乾燥しないように適度な湿り気を保って、身体を保護しています。鼻は優秀なフィルターの働きをしていますが、鼻呼吸ではなく口呼吸をしてしまうと、鼻のフィルターが働かず、ウィルスや細菌が直接、喉から血管等に侵入してしまいます。

鼻呼吸には、フィルターの役割と加湿の役割の他に、身体の中の抗体の量を調節するという大事な役割があります。口呼吸をしていると、その機能が働かず、ターゲット以外のものもやっつける抗体を増やしてしまうため、ハウスダスト等が少し触れただけで、触れた範囲以外の場所も全部ターゲットにしなければと抗体がつくられ、広範囲でかゆみ等が出る(アレルギー)可能性があります。

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口呼吸は必ず低位舌(舌が力なく下がっている状態)を伴います。このために上あごが十分に発育しません。上あごの発達不良のため、鼻気道が狭くなったり鼻中隔湾曲を起こし、ますます口呼吸が固定化されてしまいます。つまり、発育不全の悪循環(負のスパイラル)となってしまいます。口と鼻の発育は連動しているのです。こうして、目に見える形としての「歯並びの悪さ」となっていくのです。

定期的に歯科医院等でお口の機能についてチェックしてもらいましょう

正常な呼吸や飲み込みなどの口腔機能は、子どもの歯並びやかみ合わせに大いに関わっています。また、外遊びや自然との関わり合いもまた、歯並びの問題だけでなく、子どもの精神や知能やコミニュケーション能力の発達を促す上でとても大切なのです。
マスク生活が長引いていますが、子どもの3年間と大人の3年間は、こころと身体の発達の上での重要度が全く違います。保護者や周りの大人たちが、マスクの下での子どものお口の状態を定期的に確認し、気になることがあればできるだけ早めに歯科医院に相談しましょう。

北九州市では登録歯科医療機関で1歳6か月児・3歳児歯科健康診査(無料)を行っています。気になる症状があれば、歯科医院に相談してみましょう。

登録歯科医療機関(北九州市サイト)

スタッフからのメッセージ

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20世紀、歯医者は「むしばを治すところ」「入れ歯を作るところ」が主流でした。
しかし、21世紀、歯医者は「むしばを防ぐところ」「歯が無くならないようにするところ」になりました。
これからの歯医者は「一生自分の歯で過ごせるように手伝ってくれるところ」「より健康で病気になりにくい、丈夫な体の入り口を作るところ」になります。
赤ちゃんの頃からのホームドクターとの良い関係は、その子の一生を左右する大切なことです。皆さんに良い出会いがありますように!

【名称】医療法人白輝会 ふるいち歯科クリニック
【診療科目】歯科・小児歯科・矯正歯科
【住所】〒808-0035 福岡県北九州市若松区白山1-9-18
【電話】093-771-8000

1歳6か月児・3歳児歯科健康診査(北九州市サイト)障がいのある方の歯科診療について(北九州市サイト)

【お問い合わせ先】
保健福祉局健康推進課(電話 093-582-2018)または、各区役所の保健福祉課健康相談コーナーへ
・門司区役所 電話093-331-1888
・小倉北区役所 電話093-582-3440
・小倉南区役所 電話093-951-4125
・若松区役所 電話093-761-5327
・八幡東区役所 電話093-671-6881
・八幡西区役所 電話093-642-1444
・戸畑区役所 電話093-871-2331

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